10ページ目~一人暮らし~

目を覚ますと、人の声は聞こえない。家族の声も。

2月中旬から私は遂に一人暮らしを始めた。

暴力暴言を奮っていた兄と、虐待をした母親から遠くに逃げることが出来た。

今は、4月からの大学生活に期待しながら新しいバイト先で一足先に働いている。

初めての洗濯も慣れてきた。お皿洗いも部屋の掃除も、それなりに頑張っている。


ただ、私が今不安なのはお金だ。

家族からの仕送りは無い。以前は仕送りすると発言していた母親だが、兄が車を買うと言っていておそらくそっちの方にお金を回しているんだと思う。

兄は現在母親とアパートに暮らしながら看護学校に通っている。

私が生きていく生活費よりも、兄の車のお金の方が大切なんだろう。

私が一人暮らしを始める時に持っていたお金は約10万円。

その10万円の中に、新生活に必要な物、携帯代、食費、来月の家賃、光熱費諸々が含まれていた。

しかし、私は甘く見ていたのかも知れない。

あらゆる所でお金は思った以上に必要になっていて、私は今月の光熱費が払えない状態、そして翌週からの食料が買えない状態にまでなっていた。

バイトはもちろんしているが、月末で正直厳しかった。

姉夫婦から、「食べるものが無くなったらいつでも食べに来ていい」と言われていたが、一人暮らしを始めて1ヶ月で頼る訳にはいかない。

もちろん、兄と母親が住んでいる実家にも頼りたくない。


頼りたくないというより、頼れなかった。


逃げるように一人暮らしを始めた私が、家族にお金や食べ物を強請ることは出来なかった。

また、文章では簡単に「お金と食べ物が無い」と言えるが、現実で人にその言葉を発することが私には出来ない。

そして、毎晩泣く日々が続いた。

泣いてもお金は増えない、それは分かっている。だけど私には泣くことしか出来なかった。


そんな私を助けてくれたのは、付き合ってもうすぐ8ヶ月の彼氏。

彼は私よりも年下だが、私にプレゼントや食べ物、お金を与えてくれる。でも、私は彼に今回のお金の話をすることが出来なかった。怖かった。家庭が貧乏なのも、家庭の事情も教えてはいたが、大切な人に「お金が無い」と困らせる言葉を言うのが出来なかった。

それでも、毎日している平和な通話で私は伝えようと決意をした。その時、言葉を発する前に涙が溢れてきた。

助けて、お金が無い、食べるものがない、こんなことを言ったら嫌われてしまうのではないか。とにかく不安だった。

それでも、「ゆっくりでいいから教えて欲しい」と言われ、泣きながら話をした。

その後、彼と色々話し合った。

実は3月の下旬に、2ヶ月半ぶりに彼とデートをすることになっていた。ずっと前から計画を立て、とても楽しみにしていたが、現状のことを考えて9月に延期をした。6月はお互いの誕生日で、7月は1年記念日。でも私にお金が無いせいで、全てがめちゃくちゃになってしまった。

遠距離恋愛で簡単に会うことが出来ないが、8ヶ月ぶりに会える9月までの日々の日常を頑張りたい。


そして、彼から6万円借りた。


大金という2文字では表せない額なのは分かっている。なのに、彼は6万円を振り込んでくれた。

私は「ごめんね」としか言えなかった。

もし私の家庭が裕福だったら。仕送りが少しでもあれば。こんなことにはならなかった。


彼からお金を借りたことによって、彼の知り合いから恋愛詐欺なのではないかと疑われた。

もうそんなこと言われても何も言い返せない。

周りからみると、たとえ「お金が無い」と泣きながら助けを求められたからと言っても恋愛詐欺ではあるあるのことなのかもしれないし、私のことを良く思っていないかもしれない。


私は今回のことで、1つ分かったことがある。

それは、人は1人では生きられないということだ。

人は必ずしも何かに頼りながら生きている。

頼らないと生きていけないのだ。


私の日々の目標は、「今日を生きる」こと。

当たり前の目標だと思わないで欲しい。世の中には、様々な理由で自ら命を落としてしまう人もいる。そんな世の中で、生きることは当たり前なんかじゃない。

辛いことも、楽しいことも、悲しいこともある。上手くいかない日もある。だけど、それでも私は生きたい。

新しい環境での一人暮らし生活。とにかく毎日が不安。だけど、それでも、


私は今日も生きたい。